2017年5月
保育心理士エッセイ

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中嶋 顯眞
(公益社団法人 大谷保育協会 理事・松原保育園 園長)



『保育心理士への願い』                

昨年より子育て支援新制度が施行されましたが、いささか混乱の中にあったように思います。近頃マスコミで盛んに報道されている認定こども園などの保育施設で起こった様々な事件は象徴的に見えます。教育の問題と養護、保育の課題が整理されぬままに、金銭的な事ばかりがクローズアップされ、「子育て支援」という言葉がどこへ向かおうとしているのか、何が一番大切な事なのか見失っているようにさえ感じられます。
以前はこども達を取り巻く自然や人的環境は今より確かに豊かでした。その中で子ども達も「人」としての育ちが大切にされてきました。しかし今声高にあえて倫理道徳の必要性が求められているのはどういったことなのでしょうか。便利さ、自己の欲求に答えることのみを追求してきた私たち大人の責任なのではと思います。パソコンやタブレットやDSなど新しいメデイアに取り巻かれ、私たち大人が育って来た環境からは想像出来ない時代に生きている子ども達が、かえって生きづらいのでは無いかと思うのです。
生きていくという事は楽しいことばかりではありません。思い通りに行かなかったり、人と衝突したり、たくさんの困難というか、自分の意に沿わない出来事が毎日起こります。
それをどう乗り越えていくか、自分に受け止めていく手段をきちんと子ども達に見せて伝えてきたでしょうか。楽すること、逃げることにとらわれていなかったでしょうか。子どもは、大人の背中を見ているのです。そう考えると私たちがこれまで見失ってきたものを取り返すことは非常に困難なことです。
そんな中保育心理士という学びの場が何故必要とされているのか。子ども達の「いのち」をちゃんと受け止めているだろうかと、今を生きるこどもと共に自分がどう生きたいかを問わずにはいられません。
生きづらいと感じている子ども達にどう寄り添って行くかということをこれからも共に
学んで行きたいと思うことです。


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