2016年6月
熊本地震で被災後の事業所
保育心理士としての取り組み


こども発達支援ステーション宇土
(パレット宇土・キャンバス宇土)
保育心理士 岩崎佳奈子
 
※パレット宇土(児童発達支援:親子療育)
※キャンバス(児童発達支援:放課後デイサービス小1〜高3)

4/22,23のこども発達支援ステーション宇土の内覧会に向け4/1から準備を始め進めてきましたが、まさかの熊本地震でスタッフもみんな被災しており不安なまま避難所や車中泊からの出勤という日々でした。
ライフラインもストップし事業所も断水中でしたが、少しでも役に立てればと思い建物は無事だったので避難所として施設内と駐車場を開放しました。
こんなときだからこそみんなで力を合わせてスタッフ一丸となり‘自分達に出来ることを精一杯やろう‘ということで予定通り内覧会(見学会)を行いました。

被災したばかりの今の時期にこども、そして保護者の心のケアの重要性を感じ取り組むことにしました。 同時に自分自身の“居場所づくり”となっていたのかもしれません。
対象者は児童発達支援のこどもに限らず、こども発達支援ステーション宇土がこども達、保護者のストレス発散の場、憩いの場となるよう周囲に呼びかけました。
事業所の目の前が避難所で、こどもたちは慣れない環境でストレスがたまり、保護者は不安を抱えた生活を余儀なくされている状態でした。少しの時間でも親子のほっとした表情、笑顔が見たくてこども達にはサーキットルームを開放し、ブランコやボールプール、でこぼこ平均台、はしご、スクーターボード、トンネルなどで思いっきり遊んでもらい、被災された保護者には不安・悩みなどを聴き、共有・共感し、「無理しないで」「泣いても大丈夫」「我慢せず、無理に平気なふりをせずに、こども達と一緒に怖い思いを共感してあげて」などお話させてもらいました。中には涙を流される保護者の方もいらっしゃいました。

1ヶ月が経過した今現在も毎日余震があり揺れが続く被災地は不安定な状態が続き、こども達は落ち着かない状況で過ごしています。いまだに家の中に怖くて入れない、トイレにひとりで行けない、暗くなると甘えがひどく母親から離れようとしない、突然言葉がでなくなったなど強いストレスを抱えています。

キャンバス利用のSくんはテントでの避難生活をしていました。そこでキャンバスでの活動では「先生、テント作ろう」と言って毎回テントをいろんな形で作成し安心感、満足そうな表情を見せてくれました。きっとSくんは、テントを作ることで、そして地震ごっこをすることで“今は大丈夫”“今は安全なんだ”という居場所づくりを行っているんだなと感じました。他にも事業所を利用しているこども達はサーキット中でもブランコに乗りながら「揺れるー地震です地震です」と笑顔でブランコに乗っていたり、「今地震きたらどうする?どこに逃げる?」など問いかけてきたりとさまざまな思いを抱えてこども達なりに精一杯 “今” を生きています。

保育心理士としてできることは何か・・・まずは見落とされがちなこどものストレスサイン(こどもは大人のように怖かったことを言葉で周囲にうまく伝えることができず、頑張る大人を見て我慢したり、無理に笑顔を見せたりするのでそれらのサイン)を見逃さず、しっかり様子を見て、話を聴いて、気持ちを受け止めて、こどもたちにしっかりと寄り添うことを大事にしていきたいと思います。

そして私自身被災し感じたことはたくさんの方々から励ましの言葉、支援物資などいただき周囲の方々の温かさ、家族の絆、同じ境遇で同じ方向性を向いて一緒に頑張ってくれる仲間の存在がものすごく力になっています。精一杯 “今” を生きているこども達からもたくさん気づかせてもらい、そんなこども達と命があること、明日が来ること、当たり前の暮らしのありがたさをしみじみと感じ、被災された親子のサポートをしていきたいと思います。
 


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