2017年1月
保育心理士エッセイ

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徳岡博已
(大谷大学短期大学部 教授)


スーパーでの出来事

先日、スーパーに買い物に出かけました。その時のことでした。
2〜3歳くらいの女の子が大きな声で泣いています。長い時間泣いているのか鼻水が出たままで、目の周りが赤く腫れています。一緒にいる母親らしき女性は、なかなか泣き止まないその子どもに、だんだんいらいらしている様子です。「いつまでも泣かないの」「いいかげんにしなさい!」とその女性は声を荒げてきました。子どもはますます泣きながら、地面にぺたんと座り込んでしまいました。女性は「うるさい」とその子どもをどなりつけました。今にも手が出そうです。
私は、近くで品物を見るふりをしながら状況を見守ることしかできませんでした。この時は、その後父親と思われる男性がやってきて、女性と子どもに何かを話しかけていました。その後、子どもも泣き止み、3人で手をつないでスーパーを出ていきました。
今回は何事もなく終わったのですが、こんな場面に遭遇した時、私たちはどうすればよいのでしょう?何ができるのでしょうか?虐待が疑われる子どもの救済?子育てに悩んでいる母親への支援?いずれにしても、とても難しそうです。
少し前の時代(昭和)であれば、世話好きなおばちゃんがいて、誰彼お構いなく、声をかけたのかもしれません。今の時代は、プライバシーの保護?人権の尊重?いえいえ、そうではないようです。他人への干渉をしたくない。他人から干渉されたくない。そんな個人主義の風潮が蔓延しているのかもしれませんね。個人主義の行き過ぎは、人と人とのつながりを壊しているのではないでしょうか。「おせっかいなおばちゃん」と陰口をたたかれるような、世話好きなおばちゃんが活躍できる社会はもう来ないのでしょうか?


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